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概要

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していなかったことを知った。そこで、出願人は、引用商標について、不使用を理由とする登録取消審判請求をし、攻撃・反論のやりとりがなされた結果、審判官は請求を認容する審決をした(*2)。出願公告に至るまで10年も要した理由は、このようなことにあった。(*2)商標法第50条は、登録商標が継続して3年以上使用されていなかった場合には、誰でも登録取消審判手続により、登録の取消を求めることができる、としている。 この調査を終えた私は、登録異議申立書を作成した。異議理由は、出願日である昭和41年頃には、沖縄の「瑞泉」は、既に日本国内で著名になっていたということを主張するもので、主張事実を証明する資料として37件の証拠を提出した。これに対し出願人は、出願時に沖縄の「瑞泉」が日本国内で周知であったことを争い、この商標は明治中期に取得していた前権利者から許諾を受けて使用していたなど、自らの使用の事実も主張して争った。しかし、担当審査官は、当方の主張を認め、昭和62年8 月8日に、登録異議申立を認容する決定と同時に、出願につき拒絶査定をした。このように結論が出るまで登録異議申立から10年、出願の日から20年もの期間を要したので、新聞も当時この事実を大きく報道した。 これに対し、拒絶査定を受けたT酒造場は、不服の審判請求(訴訟の控訴審に相当)をした。仮に沖縄で戦前から使用されてきた結果,周知になっていたとしても、戦争が終ってから復帰までの20年間は米軍の占領下にあって商品の流通は途絶えていたので、日本国内で周知になっていたとすることは出来ないと主張したのである。その結果、審判官(合議体)は、T酒造場の主張を認めて原査定を取り消し登録を認める審決をした。このような経過で、結局,登録を阻止することはできず、商標権が発生してしまった。 それでは、沖縄の瑞泉は商標の使用を継続することが出来なくなった?と心配する向きもあろうと思われるので、これについて触れておく。先ず、商標権者であるT酒造場からの使用差止め等の問題である。前号で述べたように、沖縄復帰特別措置法による手当がなされていて問題は無い。商標権者がその商標の登録出願をしたのは、復帰前の昭和41年で、その時点で瑞泉は、既に沖縄県内では「自己の商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた」ものとなっていたのであるから、商標権者の存在に関わらず使用を継続することが出来る。次に、第三者との関係(瑞泉の商標を無断で使用する者が現われた場合の対応)である。商標権者ではないので、商標法に基づく差止めや損害賠償請求は出来ないが、不正競争防止法に基づく同様の権利行使が可能である。しかし、訴訟手続きで立証手段が異なって来る。商標法に基づく訴訟であれば、商標登録原簿謄本を提出するだけで簡単に差止め等の請求権の存在を証明できるが、不正競争防止法による場合は、使用している商標「瑞泉」が自己の商品を表示するものとして需要者間に広く知られていることを何らかの方法で立証しなければならない。しかし、瑞泉酒造株式会社の場合には、そのような立証は容易であろう。このように、実質的には商標権者と変わらない保護を受けることが出来る。 写真は、明治神宮のホームページ掲載の画像を引用したものであるが、大鳥居(第2鳥居)近くの参道傍に、国内の酒造業者約180社から奉納された日本酒の菰樽が6段重ねで積み上げられている。ヨーロッパ系の外国人にとっては珍しい風景のようで、大勢の観光客がたむろしシャッター音が途絶えない。この菰樽の最下段左端の目につき易い箇所に「瑞泉」と「久米島の久米仙」の樽が並んでいて流石と思わせる。なお、「久米島の久米仙」の上に見える「真澄」は信州の銘酒で、私のクライアントの一社である。沖縄県発明協会との関わり さて、前号では、発明協会沖縄県支部(平成22年12月17日に組織変更により一般社団法人沖縄県発明協会が発足したので、以降,「沖縄県発明協会」または単に「発明協会」という。)の事務局長・宮城秀平氏に初めてお会いしたところまで述べたが、以後の発明協会との関わりについて述べたい。 宮城事務局長は、迎えて下さった空港で初めてお目にかかったのであるが、小柄な方で常にこやかで笑みを絶やさず、誠実さが伝わってきて、沖縄の人の良さを感じた。滞在した数日の間は色々とお世話下さり、これまでに県内で生じた諸々の知財関係の情報や問題点を述べられ、私に対し「県内に弁理士が一人もいなかったため、これまで何かあっても相談できるところが無く困っていた。これからは、頻繁に連絡することがあるかも知れないが、アドバイスをお願いしたい。現在,毎月1回,東京と福岡の弁理士に交代で来て頂き会員からの発明相談等に対応して貰っているが同様に来て貰えないか。また、毎年秋に沖縄の産業まつりが開催され、その際に発明工夫展が開かれるのContribution 寄 稿7 OKINAWA INDUSTRIAL FEDERATION NEWS