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毎年台風の襲来で大きな被害が出ている沖縄にとって最適な工法が生まれるのではないかと考えた。現地の気温は極めて高く、宿舎内では夕食後は、日中の疲れを癒すためアルコールとともにマージャンを楽しむのが大方の日課であったが、これに加わることなく毎晩図面を引いて検討を続けた。このような日々を3年間続け、帰国すると書き溜めた図面を基に金具を実際に製造して耐久試験をするなどの経過を経て、遂に「木造軸組み接合金具」の発明を完成した。東京大学構内の木質構造研究会のメンバーの面前で発表する呉屋氏の姿を思い浮かべると、小学校を卒業しただけで専門の学校に進学することなく進む道を決め、自からの職業に自信を持ち、目標を持ってコツコツと真摯に研究を重ねて立派な発明を完成させた呉屋氏に、真実、頭が下がる思いである。発明というものは、正に、このような自分の日常の仕事の中から必要とされるテーマを見つけてなされるべきものではなかろうか。(*2)主として松などの木材から成る2インチ×4インチ(5センチ×10センチ)の断面を持つ材料を使って壁や床用のパネルを作り、このパネルで箱を組み上げるようにして造る住宅。 帰国した呉屋氏は、この発明を昭和61年(1986年)秋の産業まつりの発明くふう展に応募したところ、最優秀賞を受賞、翌年2月には、第28回全国発明工夫コンクールで日本商工会議所会頭賞を受賞、平成14年(2002年)11月には、九州地方発明賞を受賞、平成24年(2012年)には、日本建築の伝統的文化の発展に多大な貢献をしたとの理由による第55回建築士会全国大会での表彰等、種々の賞を授与され評価を受けている。この発明は、当初は実際の建築現場では、あまり知られておらず実施されることは少なかったようである。しかし、転機となったのが平成7 年(1995年)の阪神淡路大震災である。この震災後の復興に強度の高い集成材と接合金物を使用したクレテック工法(*3)が注目され、爾後、多くの企業に採用されるようになった。その後、国内100社余りの企業が日本住宅・木材技術センターの合理化住宅認定を取得し、このことが我が国における金物工法普及の大きな契機となった。(*3)「クレテック」は登録商標であるが、平成8年当時の建築関係の雑誌には、殆ど毎号、この接合金具に関する記事が掲載され「クレテック工法」の語が用いられていた。呉屋氏から直接伺ったことであるが、カナダから里帰りした若い頃の大工仲間が「君は、相変わらず昔のやり方で柱や桁にノミで孔をあけているのか。カナダではそんなやり方をする者はいなくてこれを使っているから持ってきたよ。」と土産を渡された。包みを開いてみると、実施許諾をしている新潟のT社が輸出しているクレテックの刻印のある金具で、大笑いとなったとのことである。 私が発明くふう展の審査員を辞した後もくふう展は毎年継続して開催されており、県内産業の発展に一方ならぬ役割を果たしている。今年は前記のように中止となるが、発明に関心を持つ人々に目標を与え、沖縄県の知財知識の向上に大きく影響を与えている。実際に、このくふう展由来の発明の幾つかは実績が認められ、呉屋氏のほかにも、国内で広く知られ実施されている発明もある。発明協会は、このほか、発明相談・講演会等、日常の地道な活動に努めておられるので、「ちんすこう」事件当時の殆どゼロに近かった知的財産権に対する沖縄県民の知識は格段に向上し、その状況は本年8月発行の「特許行政年次報告書2020版」にも数字として明確に表れている。報告書には、昨年(平成31年、令和元年)の都道府県別の出願件数が掲載されているが、次表は、報告書中の九州地方各県の出願件数を四法別に数の多い順に並べ替えたものである。沖縄県のカッコ内の数字は昭和56年の出願件数(沖縄大百科事典による)で、四法別各分野とも著しい増加が見られる(*4)。沖縄県発明協会の永年に亘る努力の成果と言って良いであろう。今後の更なる向上が期待される。(*4)実用新案の出願件数が特許に比して著しく低いのは、制度が無審査となったことが原因。(次回11月号に続く)【特 許】 【実用新案】 福 岡 県 1,995 件 福 岡 県 131 件熊 本 県 243 件 大 分 県 43 件大 分 県 191 件 宮 崎 県 23 件鹿児島県 173 件 佐 賀 県 15 件佐 賀 県 167 件 鹿児島県 12 件宮 崎 県 154 件 沖 縄 県 (111 件)12 件沖 縄 県 (41 件)131 件 熊 本 県 11 件長 崎 県 107 件 長 崎 県 11 件【意 匠】 【商 標】 福 岡 県 368件 福 岡 県 3,234件佐 賀 県 84 件 沖 縄 県 (114 件)781 件沖 縄 県 (72 件)77 件 熊 本 県 590 件熊 本 県 51 件 佐 賀 県 581 件大 分 県 41件 鹿児島県 534件 宮 崎 県 38 件 大 分 県 478 件鹿児島県 31 件 宮 崎 県 433 件長 崎 県 18 件 長 崎 県 345 件クレテック工法で使用される接合金具の実例OKINAWA INDUSTRIAL FEDERATION NEWS 18