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概要

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琉球大学工学部工学科社会基盤デザインコース・助教 須田 裕哉コンクリート構造物は様々な自然環境下に曝されており,そのような環境中にある劣化因子(温度や湿度,海水や二酸化炭素・・・など)が要因となることで,コンクリート構造物(コンクリート)は劣化します.劣化したコンクリート構造物は,コンクリートにひび割れが生じ,更なる劣化進行によって,内部の鉄筋破断やコンクリートの断面欠損が生じ構造物の耐久性は低下します.コンクリートに生じる劣化は,作用因子の違いによってそのメカニズムが異なり,また個々の劣化因子が複合的に作用する場合は複雑な劣化メカニズムとなります.コンクリートに作用する様々な劣化因子の機構を把握するためには,コンクリートを構成している個々の物質に着目し,個々の物質の特性に基づいた評価が重要と考えられます.コンクリートは一見すると灰色で無機質な様子ですが,その内部を電子顕微鏡で観察すると(写真1),形態の異なる様々な物質(水和物)や隙間(空隙)で構成されていることがわかります.特に,これら水和物や空隙の大きさは数nmから数十μmほどでコンクリートは非常に微細な構造によって成り立っています.すなわち,コンクリートの性能は,これら微細な水和物の特性や水和物により形成される空隙の特性によって支配されていると言えます.このような観点から,現在,水和物に着目し水和物個々の性質に基づいたコンクリートの性能評価に取り組んでいます.コンクリートに生じる劣化現象の一つとして中性化があります.中性化は大気中の二酸化炭素がコンクリート内部の水和物と反応し(炭酸化),コンクリートのpHを低下させることで内部の鉄筋腐食の要因となる劣化現象です.本研究では,この炭酸化によるコンクリート内部のpHの変化を再現するため,熱力学的相平衡計算という手法を用いてコンクリート内部の水和物と二酸化炭素の化学反応を再現しました.図1に,炭酸化に伴うコンクリートを構成する水和物の変化を示します.図に示されるように構成される水和物は炭酸化の進行によって変化し,最終的にカルサイト(炭酸カルシウム)とシリカゲルに変質します.また,炭酸化によりコンクリートの体積も減少しました.図2に炭酸化に伴うpHの変化を示します.炭酸化によるコンクリート内部のpHは,階段状に減少しており,これらは構成水和物の炭酸化に対する安定性に起因するものと考えられます.これまで計算機上でコンクリートの劣化現象を再現してきましたが,実環境では様々な因子が複合的に作用するため,そのような条件について,実験と計算の両面から検討を行っていく予定です.1.はじめに3.検討結果4.おわりに2.検討内容連絡先: 琉球大学工学部工学科内米須章(電気システム工学コース)/山里将朗(電子情報通信コース)〒903-0213 沖縄県中頭郡西原町千原1番地TEL.098-895-8692(米須)/098-895-8679(山里)FAX.098-895-8708【E-Mail】kouenkai-office@ml.tec.u-ryukyu.ac.jp微視的機構に基づくコンクリート構造物の劣化メカニズムの評価琉球大学工学部後援会からのお知らせInformation ysuda@tec.u-ryukyu.ac.jp写真1 コンクリートの微細構造図1 炭酸化による構成物質の変化図2 炭酸化によるコンクリートのpHの変化OKINAWA INDUSTRIAL 20FEDERATION NEWS